「もしかして…
弟さん、いらっしゃいますか?」
思わず、口にしていた。
以前、たしかに査定したペンダントトップ。
「ボディービルダーのような……」
「いるよ。これは、弟の遺品だ」
短い返事。静かな声。
今日と同じショッピングセンター。
フードコートの一角。
弟さんは、よく笑う人だった。
初対面でも人懐っこく、自然と会話が弾む。
若い頃の話。
体を鍛えているという話。
笑い声が途切れなかった。
「ちょっと見てよ、これ」
そう言って差し出してきたのが、
ペンダントトップ。
横浜の宝石商から買ったこと。
いつか値段が上がると信じていること。
目を輝かせながら教えてくれた。
そして
あの日、持ち帰られたペンダントトップが、
いまは、“遺品”として目の前にある。
「…突然、連絡が取れなくなってさ。
様子を見に行ったら、独りで、家の中で」
そう話す男性の声の調子は変わらない。
1年前の会話を思い返しながら、
僕は、覚えていることを、
ひとつずつ伝える。
弟さんがどんな顔で、
どんな風に話していたか。
「…物には、想いが宿るんだな」
それまで静かに、
僕の話に耳を傾けていた男性が、
ぽつりと呟いた。