ご縁日記

北海道編
東北地方編
関東地方編
中部地方編
近畿地方編
中国地方編
四国地方編
九州地方編
沖縄編

ご自宅にある品物の数々。
ほかの人にはその価値が
伝わらないかもしれません。
けれどその奥には、持ち主だけが知る
いくつものストーリーが詰まっています。
手に取った瞬間、ともに過ごした日々。
眠らせていた年月。
忘れられない場面や、だれかの想い。
全国を巡る催事のなかで、
数えきれない物語と出会ってきました。
これは、催事買取を通じて生まれた
心温まるつながりを綴った記録です。

各エリアをクリックすると、 お客様とのエピソードをご覧いただけます。 どこで、どんな物語が生まれたのか。少しだけ、のぞいてみませんか。 少しだけ、のぞいてみませんか。

北海道編
北海道編
東北地方編
東北地方編
関東地方編
関東地方編
中部地方編
中部地方編
近畿地方編
近畿地方編
中国地方編
中国地方編
四国地方編
四国地方編
九州地方編
九州地方編
沖縄編
沖縄編

買取実績 ACHIEVEMENTS

詳しく見る
買取実績
詳しく見る

買取スタッフのご紹介 MEMBERS

詳しく見る
詳しく見る

北海道編

あなたが、いい。

北海道編

自動ドアが開くたび、
冷たい空気が流れ込むスーパーの入口。
ティッシュを差し出すと、
厚手のコートに包まれた小柄な女性が、
一瞬、足を止めた。
驚いた表情。
突然、身長180cmを超える男に
声をかけられたら
誰だって身構える。

「…何をしてる人?」
警戒の奥にのぞく、ほんの少しの興味。

「売ろうと思うものはあるんだけどね」
そう言って、女性は続けた。
「初任給で買った指輪なの」

長いあいだ、しまわれていたアクセサリー。
売りたい気持ちと、
適当な相手には渡したくない気持ち。
その間で、立ち止まっていたのだと思う。

「値段が合わなければ、
手元に置いておいても大丈夫ですよ」

僕は、売る・売らないより先に、
この指輪の背景を知りたかった。
なぜ買ったのか。
どうして今まで手放せなかったのか。
ゆっくり、丁寧に、想いを振り返る。

女性は、指輪を手にとっては戻し、
昔の話をしては、少し黙る。

「…やっと、売り先が見つかったわ」
査定を終えた女性は、
肩の力が抜けた表情で、そう言った。

それから女性は、
催事のたびに顔を出してくれるように。

家の近くに新しい買取店ができたと聞いた。
それでも、「あなたがいい」と
変わらず会いにきてくれる。

東北地方編

物には、 想いが宿るんだな。

東北地方編

「もしかして…
弟さん、いらっしゃいますか?」

思わず、口にしていた。
以前、たしかに査定したペンダントトップ。
「ボディービルダーのような……」

「いるよ。これは、弟の遺品だ」
短い返事。静かな声。

今日と同じショッピングセンター。
フードコートの一角。

弟さんは、よく笑う人だった。
初対面でも人懐っこく、自然と会話が弾む。

若い頃の話。
体を鍛えているという話。
笑い声が途切れなかった。

「ちょっと見てよ、これ」
そう言って差し出してきたのが、
ペンダントトップ。

横浜の宝石商から買ったこと。
いつか値段が上がると信じていること。
目を輝かせながら教えてくれた。

そして
あの日、持ち帰られたペンダントトップが、
いまは、“遺品”として目の前にある。

「…突然、連絡が取れなくなってさ。
様子を見に行ったら、独りで、家の中で」

そう話す男性の声の調子は変わらない。

1年前の会話を思い返しながら、
僕は、覚えていることを、
ひとつずつ伝える。
弟さんがどんな顔で、
どんな風に話していたか。

「…物には、想いが宿るんだな」

それまで静かに、
僕の話に耳を傾けていた男性が、
ぽつりと呟いた。

関東地方編

必ず売らなきゃ いけないのかしら。

関東地方編

とある百貨店、
催事場の片隅で足を止めた女性。
落ち着いた歩み方が、どこか印象的だった。
「持ってきたら、必ず売らなきゃ
いけないのかしら。」
その表情には、
初めての買取への不安が滲んでいる。

翌日、大切そうに抱えてきたのは、
亡くなったお父様が遺した金のおりん。
自分の身辺整理のため
手放すことを決めてはいたが、
誰に託すのが正しいのかを
慎重に考えているようだった。
「今日は持ち帰って、
ご家族とゆっくり話してみてください。」
無理に決めるより、
そのほうがこの品物にふさわしい。

後日。気持ちの整理がついたのだろう。
穏やかな顔でブースにやってきた。
「本当にいいんですか?」
女性は、少し微笑んでつぶやく。
「ありがとう、すっきりしたわ。」

大切な品物を前にすると、
思い出が自然とこぼれてくる。
美術の話、昔の旅行の話、お父様との話。
催事という場を借りて
彼女の記憶を共有する。
大切な思い出を預ける相手として
選んでもらえたことが、
なんだか、たまらなく嬉しかった。

それからの4年間。
身の回りを整えるたび、
必ず連絡をくれるようになった。
「自分に何かあったときのために」と、
笑いながら。

中部地方編

残すべきでしょうか。

中部地方編

「古いものなんですが、
見ていただけますか?」

差し出されたのは、
ありふれたカメラとレンズ。
正直なところ高額な品ではなかった。
それでも、
査定中に何度も向けられる視線から、
ただの持ち物ではないことが伝わってくる。

「これは、ファミリー向けのカメラですね」

発売されていた年代や、当時の立ち位置。
そうした情報を手がかりに、
いつごろ、どこで
購入されたものなのかを探るように、
会話を少しずつ広げていく。

「……父が大事にしていたものなんです。
形見として、残すべきでしょうか」

迷っていたのは売るかどうかではなかった。

お父様が大切にしていたカメラを、
誰かに使ってもらうほうがいいのか。
それとも、自分が持ち続けるべきなのか。
どうすれば後悔しない選択になるのか。

「残しておくなら、
メンテナンス方法も知りたいんです」

手放すのは、いつでもできること。
保管の仕方や、手入れのこと。
いくつかの選択肢を伝える。

少し考えたあと、
男性はカメラをカバンに戻し
持ち帰ることを選んだ。

「来てよかった」という、ひと言を残して。

近畿地方編

これも見れるか?

近畿地方編

ホームセンターの店内。
蛍光灯の白い光。レジの音。
その場に似つかわしくない男性が、
目に入る。
キチンと仕立てられたジャケットに、
日本人離れした、彫りの深い顔立ち。

男性は、まっすぐこちらへ向かってきた。
手に握られているのは、催事の案内チラシ。
買い物のついで、ではなさそうだ。

僕の前に立つと、
時計とバッグを静かに差し出す。
「父の遺品」
ぶっきらぼうにそう言って、口を閉じた。

「おしゃれですね」

聞きたいことはあったが、
こちらから踏み込むのはやめた。
夏の蒸し暑さのせいか、
会話の合間に、汗が滲む。

沈黙をムリに埋めることはしない。
言葉に出さなくても、
頭のなかで、
たくさんの想いを
巡らせている人だと感じたから。

品物とは関係のない話を挟みながら、
時間がゆっくり過ぎていく。

30分。
相変わらず、品物の話より雑談が多い。
思い出を言葉にせず、
自分のなかで整理している
時間のようだった。

買い取りが終わり、
男性は静かに頭を下げて帰っていく。

翌日。
男性は紙袋をさげて、再び現れた。
中には、整理しきれずにいた品物が
無造作に詰め込まれている。

「これも見れるか?」
その声は、昨日より少し柔らかかった。

中国地方編

あなたじゃないなら、 考える。

中国地方編

その日も僕は、
玄関先で世間話に花を咲かせていた。
体調のこと。
日常のできごと。
近況報告。

いつもと変わらない、穏やかな時間。
僕が、もうここへ来れなくなることを
伝えるまでは。

女性との出会いは、ちょうど1年前。
スーパーの催事場で、
声を掛けてもらったことが、きっかけだ。

「ちょっと、相談してもいい?」

これまで何度か
会釈を交わしていただけの女性。
声を聞くのは、そのときが初めてだった。

話してくれたのは、ご主人のこと。
長いあいだ集めてきた切手を、
寝たきりになった今、
少しずつ整理したいのだと言う。
「書斎いっぱいにね、あるの」
少し困ったように笑いながら、
でもその表情は、どこか誇らしそうだった。

一気に整理するのではなく、
1度にアルバム1冊ずつ。
1年かけて少しずつ。

30分。1時間。
自然と、話す時間が増えていく。
本当はご主人に聞いてほしかった話を、
僕にしてくれる。

役職が変わり、内勤になると伝えた日。
「…あなたじゃないなら、考える」
少し間を置いて返ってきたその言葉に、
胸の奥が、きゅっとなる。

そんなふうに言ってもらえたことは、
素直にうれしかった。
けれど、その分だけ胸も痛む。

別の鑑定士への引き継ぎは、進まなかった。

ふと思い出すたび、女性がまた、
大切なものを安心して預けられる場所に
出会えていることを、願っている。

四国地方編

息子が来たよ!

四国地方編

催事会場で出会ったそのふたりは、
長年連れ添った夫婦だと言われても
きっと疑わなかったと思う。
言葉の端々や、ふとした視線に、
積み重ねてきた時間がにじんでいた。

僕のもとに何度も足を運び、
長い時間かけて集めてきた宝物を、
少しづつ手放していく。
その度に、いろんな話を聞かせてくれた。

『のど自慢』に出たときの映像を
うれしそうに何度も見せてくれたり。
ふたりの間に子どもはいないけど、
猫をたくさん飼っているという話だったり。

やがて、いつも会っていた催事が
なくなったあとも、
やり取りは自然と続いた。
催事会場でのやり取りは、
やがて、ふたりの家での
買取へと続いていく。

その日も、約束の時間。

インターホンを鳴らしても、反応がない。
電話も繋がらない。
嫌な想像が膨らみ、胸がざわつく。
「猫がいちばんの宝物やな」
そう言って笑うふたりの顔が
脳裏に浮かんだ、そのとき。

「息子がきたよ!」
家の奥から聞こえる、女性の元気な声。

電話がつながらなかった理由は、
拍子抜けするほど単純だった。
スマホ料金の払い忘れ。
たったそれだけのことなのに、
安否が分からなかった時間は、
やけに長く感じた。

僕は、ふたりから“息子”と呼ばれている。
そして僕にとっても、
その呼び方が、なぜかしっくりきている。

九州地方編

あなたになら、 預けてもいい。

九州地方編

催事会場に立っていると、
たまに空気の変わる瞬間がある。
この日が、まさにそうだった。

地方のスーパー。
買い物客が行き交う売り場に、
全身をブランドで整えた女性。

差し出されたのは、1本の腕時計。

生涯に一度、出会えるかどうかの逸品だ。
けれど、その存在感よりも先に
こちらを見定めるような視線が突き刺さる。

知りたいのは時計の価値じゃない。
この人間は信頼に値するのか。
それを問われている気がした。

あえて、値段の話はしない。
これまでこの仕事のために、
美術や映画、音楽に触れ続けてきたこと。
トレンドを追い、実物を見て
自分の感覚を更新し続けてきたこと。
知識を並べるのではなく、
どう見て、何を感じてきたかを言葉にする。

最初は短かった彼女の返事が、
やがて話の先を求めるようになり、
少しずつ、感情を帯びていった。

気づけば2時間。
周囲の騒がしさとは切り離されるように、
会話が続く。

「あなたになら、預けてもいい」
彼女は僕の顔を見て、そう言ってくれた。

沖縄編

ガラクタばかり、 持ってきたよ。

沖縄編

海風が、かすかに潮の匂いを運んでくる
ショッピングセンター。
白髪の男性と目が合った。
秋なのに短パン姿。
笑うと、やけに無邪気で印象に残る。

「買取か…。昔、嫌な思いをしてね」
ロレックスを安く見積もられた話。
笑い話にしていたが、
その奥には、悔しさが見え隠れする。

「そのロレックスは
これぐらいの金額になっていたはずです」
「へえ。じゃあ、
捨てようと思ってたものも見てよ」

閉店間際。
再び現れた男性は、息を切らしていた。
急ぐ途中で転んだらしい。
膝を気にしながらも「間に合ってよかった」と笑っている。

「ハハハ、ガラクタばかり持ってきたよ」
ホコリをかぶったおもちゃ箱の中には、
亡くなった奥様が集めていた
大量のアクセサリー。

「やっと気持ちが落ち着いた頃に
見つけてね」
そう言う男性の視線が、ふと止まる。
手に取ったのは、金のペンダント。
指先で確かめるように、
しばらく眺めていた。

「…俺があいつに買ってやったやつだ。」

それだけは売らないほうがいいと伝える。
「この先も価値が
大きく下がるものじゃないので」

男性はゆっくりとうなずき、
何も言わずにポケットにしまう。
さっきまでの無邪気さとは違う、
どこか愛おしそうな表情をしていた。

Schedule 催事日程

催事日程